2020年6月20日土曜日

蔵元雑記

日本酒は農作物である


酒の不具合


オフフレーバーという言葉を最近SNSで多く見かけます。「狙って出した訳ではない、好ましくない香り」という意味です。醸造酒界隈でよく使われてる気がします。原因は数多あります。発酵が上手くなかったとか、瓶詰めが上手くいかなかったとか、保存段階でダメージがあったとか。

日本酒の流通はとても高度化しました。「瓶に直射日光を当てない、生酒は冷蔵する」という管理が当然に守られてる上で、更には「繊細な日本酒はマイナス温度」というレベルで酒を扱う酒屋さん、飲食店さんも増えてます。

その中でも酒の不具合が出たとしたら、まぁ、ほぼほぼ原因は我々酒蔵の方にあります(笑)。言い訳が一切できないので、ただ謝る事しかできません。


日本酒の品質保持


日本酒のトップ大手メーカーの日本酒。僕にとってここ数年で一番センセーショナルだったのが「コンビニ販売の日本酒熱燗ボトル」。加温気に入れて販売できるそうです。ヤバい。何がヤバいかって「温度劣化」を完璧に克服したたという点です。(日本盛熱燗180ボトル

長時間の加温で品質が変わらないというのは超人的(超酒的?)です。聞くに「老香(ひねか)」とよばれるオフフレーバーが発生しにくい酵母の開発に成功したとのこと。ああ、なんて羨ましい!50年くらいして特許が切れたら一般の中小酒蔵もソレ使えるようになるんでしょうか。未来が待ち遠しいぜ!


さて、こんな商品開発が笹祝に出来るかというと絶対無理です。温度が高い環境に置かれたら一番タフな普通酒だって劣化していきますし(良い保管であれば酒質が向上する場合もあります)、繊細な無濾過シリーズや生酒なんて、より顕著に味わいが変化していきます。

というかそもそも、毎年同じ酒質の日本酒を生産することや、1本のタンクで醸した1000本の一升瓶を同じ品質にする事すら無理です。実を言いますと。



日本酒は農作物


農作物は均質ではありません。家庭菜園をやるとよく分かるのですがキュウリは一本一本長さや曲がりが違います。水と米と菌とカビで発酵させる日本酒も普通は均質には造れません。でも見た目が全く変わらないガラス瓶に詰められラベルが貼られるから同じものに見えてしまうかもしれません。が、目では見えない中身は長さが違ったり曲がりくねったりしてるんです(比喩)。

大手日本酒メーカーさえ、そこを完璧にコントロールすることは出来ないと思います。製造量をしっかり確保し、複数の仕込んだ酒をブレンドすることにより偏差を縮める努力をしています。

笹祝規模の日本酒蔵であれば、普通酒を除いて特定名称の発酵はタンク1本か2本。「あれ?今年の純米吟醸は思ったより〇〇だな」と蔵人が感じる違いが、ブレンドによる修正をされないまま消費者の口の中まで行く事になります。もちろん良い違いもあれば悪い違いもあります(悪い違いであれば、濾過等の処理やお酒の役割を変えるなど修正したりもします)




日本酒を愛する皆様へ



「あれ、このお酒変だな。いつもと違うな」そう感じたときに、悪い変化であれば酒蔵までお知らせ頂ければと思います。会社規模は小さくたって、全国の日本酒蔵は美味しい日本酒を造ることを第一に考えて改善に取り組みます。

その上で、日本酒の中には自然の生命、農家さん、蔵人が生きている事も改めて意識して飲んでもらえたらうれしいです。不揃いで、時に不細工でも愛嬌たっぷり!僕らにとって世界に2つとない大切な子供。みんな違ってみんな超カワイイ!!

日本酒がさらに偉大に、さらに愛されるでしょう。




☆★☆蔵見学が新しくなりました☆★☆
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☆★☆今週の試飲営業☆★☆

6月20日(土)9時~12時、13時~17時
6月21日(日)9時~12時、13時~17時
6月22日(月)10時~17時
6月23日(火)10時~17時
6月24日(水)10時~17時
6月25日(木)10時~17時
6月26日(金)10時~17時
6月27日(土)9時~12時、13時~17時
6月28日(日)9時~12時、13時~17時

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