2020年1月18日土曜日

生酛仕込みは水分管理に続く

埋け飯からの山卸


前回のブログ「生酛仕込みは水の準備から始まる!」
https://sasaiwaishuzo.blogspot.com/2020/01/blog-post.html

『生酛酒母仕込み』についての続編です。水の用意が整ったら、いよいよ麹と蒸米を用意し代名詞でもある「山卸(やまおろし)」という作業に入ります。が、そのまえに大事な工程『埋け飯(いけめし)』を行います。

生酛仕込みでは序盤はお米を硬い状態、後にドロドロ状態(水っ気が少ない!)で維持する必要があります。そこで先ずは蒸米を麻布で包み、桶にいれて風が当たらないように半日以上かけてゆっくり冷却し、米の芯が固い状態に。この一連を『埋け飯(米を桶の中にうずめておく事から?)』と呼びます。

※仙台某蔵の古文献「清酒吟醸要訣」では『「イケ飯」法によつて更らに蒸米の柔軟化を圖らねばならぬ』と真逆のこと書いてありました。でも必ず必要な工程であるという事は一致。

そういえば一年目の生酛では亀の尾で仕込んだのですが、この本に『「龜ノ尾」種の場合は同溫度に於いて糖化、成酸の進度が遙かに劣り、同じ程度の糖分、酸量の集積にも遙に長時間を要する』などいかに「亀の尾」が生酛に向かないかが懇々と書かれていました。それでも亀の尾で仕込みましたが。本によると、柔らかい雄町のような米が最適との事。新潟市で誰か育ててくれないかなー雄町か山田錦か!

『埋け飯』の次は半切り桶に「麹・蒸米(硬)・水(硝酸を含む)」を混ぜ合わせ、蔵人が息を合わせて櫂棒で米をすり潰す『山卸(やまおろし)』という作業。

今年は「秋田式生酛」と称される電動ドリルの先端を木工用に付け替えたもので代替しました。※実は昨年の酒仕込みで2本酛を立て、一方を手作業。一方をドリルで仕込んでみました。笹祝的には出来栄えに差が認められなかったので、今年はすこぶる楽なドリル方式を採用。



ちなみに、昔ながらの山卸はこんな感じです。challenge brewの時のものhttps://www.facebook.com/makikomusakedukuri/videos/182931629104171/


それぞれの菌が湧きやすい環境をつくる


生酛酒母では通じて『水っ気が少ない』状態を維持します。水分が少なければ雑多なバクテリアが湧きにくいうえ、すり潰したドロドロ状のノリっぽい液体では野生酵母は酸素欠乏になり増殖することができません。一方、酸素が無くても活動できる嫌気的な環境を好む乳酸菌類はのびのびと勢力を伸ばしていけるそうです。

『山卸』が終わったら半切りの物量を発酵用のタンクに集め(酛寄せ)、ここからは日々の温度操作『暖気(だき)』によって酒母を育てていきます。ブログを書いてる本日は酛寄せ後、温度を低く保つことで早く湧いてしまわないようセーブする期間『打瀬(うたせ)』。この間に麹からくる酵素により蒸米を溶かしていきます。この打瀬の期間をしっかりとることで『硝酸還元菌→乳酸菌→清酒酵母菌』という黄金リレーを順序正しく導くことができます。

ちなみに生酛仕込みというと「厳寒期の深夜から朝にかけて行う過酷な酒造り」的イメージがあります。が、ここ4年の経験上むしろ寒すぎると上手くいかないです。初年度こそ蔵の中で一番寒い場所&寒い季節で仕込んでいたのですが、今年は一般の酒母と同じ部屋にフツーに置いています。一番低温が求められる『打瀬』の時でも7°前後でOK。今年くらいの暖冬だとヒーター使わなくて済んでラッキーてなもんです。



暖気作業へと続く


『打瀬』の期間を終えれば次は『暖気』。お湯を入れた金属の水筒を酒母の中に差し込み、酒母の温度をゆっくり上げ下げするタームです。ひとまず本日の生酛酒母作業は終了!

次回「生酛仕込みは温度管理に続く

〇◇〇試飲営業〇◇〇

1月18日(土)13時~17時
1月19日(日)13時~17時
1月20日(月)10時~17時
1月21日(火)10時~17時
1月22日(水)10時~17時
1月23日(木)10時~17時
1月24日(金)10時~17時
1月25日(土)13時~17時
1月26日(日)13時~17時

2020年1月12日日曜日

生酛仕込みは水の準備から始まる!


笹祝は生酛仕込み4年目


challenge brew壱ノ巻「第一弾」から仕込み始めて4年目、今年も『生酛酒母』の準備を始めています。『生酛』とは酵母を安定して育てる為に必要な「酸(主に乳酸)」を菌の反応によって作り出す技法です。

言い換えれば世の日本酒は生酛系か白麹仕込み(白麹はクエン酸を多量に排出し、酸の添加が不要)以外は既に出来上がった乳酸を製造工程内で添加しています。←酸の添加を否定するわけではありません。笹祝の多数の酒もそう、歴史の中で開発された偉大な技術です。これは『速醸酒母』と呼ばれ、笹祝が創業した明治後期に開発されました。

 
40%精米、48%精米の米。当時はこんなに磨かれた米も無かったでしょう

生酛仕込みには水選びが超重要


ちなみに「笹祝にとって生酛仕込みでもっとも大切なポイントは何ですか?」と聞かれたら僕は「水」と答えます。1年目(2016by)・2年目(2017by)の生酛仕込みは適切な水を見つけることが出来ず、各種菌類を沸かせるまでに非常に難航しました。。。昨季の3年目(2018by)になってようやく『笹祝(自己流)メソッド』を確立。酒質もガラッと変わったと思います。


↑これはNO3チェッカーといって液体中の硝酸を図れるもの。硝酸の濃度が高いほど色が濃く染まります。右の薄ピンクが1~2年目に使用していた水、左の濃いピンクが昨年から使用している水です。生酛仕込みでは「硝酸」という窒素化合物が適度に含まれていなければなりません。

ちなみにこのチェッカー、熱帯魚屋さんへ行くと購入できます(笑)僕は好みで新潟が世界に誇る観賞魚用器具ブランド アクアデザインアマノ 製を買っています。

タンクの中は菌の戦国時代


生酛仕込みの菌の推移を簡単に説明しますと

①硝酸還元菌というバクテリアが水中の硝酸をエサに亜硝酸を発生させる。②発生した亜硝酸が他のバクテリア類を押さえつけている間に、麹が少しずつ米を溶かしていく。③溶けた栄養素をエサに乳酸菌が活動を開始、乳酸を多量に生成し酸っぱくなる。最初に活躍した硝酸還元菌や強めの野生酵母など、ほとんどの菌が全滅。乳酸菌自体も自分の酸に耐えられず死滅。④ここで清酒酵母を投入。バラエティ芸人ではありませんが、清酒酵母は高い酸性の中でも活動できる「特殊訓練」された菌たちです。こうなれば敵なし!自分たちの仲間をガンガン増殖させます。

生酛に適した水


「新潟の水は軟水だから、綺麗なお酒が多い」とよく言われます。実際その通りではあるのですが。。。実は菌が初発で元気に動き回るには、清純すぎたり、ミネラル類が少なすぎたり、濾過されたような「綺麗すぎる水」は向かないです。生酛以外の仕込みであっても許可されたミネラル類を添加して水を強化することがあります。※あくまで菌増殖初発期の話です。それ以降に使う水は綺麗に越したことはありませんし、添加は不可です。笹祝酒造のエリアもご多聞にもれず軟水地帯で「沸きにくい水」。生酛仕込みをする上でミネラル類を添加すればずいぶん楽になるのですが。。。「せっかく伝統技法である生酛を仕込むのであれば、かつてと変わらず、なるべく自然物のみで仕込む〝ナチュラルサケ”をつくりたい!」と意地の無添加を貫いています。

実際それでひどい目にあった年もありました(笑)昨年からは様々改善され、衛生的かつミネラルが高い自然な水をスターターの水として見つけ「米・水・麹カビ・酵母」のみで仕込む生酛仕込みの無濾過純米酒が完成しました。

ちなみに、なぜ硝酸のチェッカーが熱帯魚屋で買えるのかというと、本来の用途は水槽内の水替えタイミングを調べる為のモノ。バクテリアが適切に活動する水槽では、魚のフンや食べ残しはバクテリアの働きによって無害な硝酸にかわります(とはいえ、あまりにも濃度が高いと良くないので水替えしましょう)。

通常酒蔵で使う清純な水では、悪い意味で「綺麗すぎて」うまく生酛メカニズムが働きません。それを、なんといいますか、、、表現が難しいですが、、、『上手い具合に「ナチュラル」な水をゲット(あるいは人為的に作り出して)、初発の酵母増殖期の水として使うという事が必要になります。もちろん有害なバクテリアが入り込まない、増殖しないような対策は完璧にやった上でです←【とても重要です】


次回、生酛仕込みは水分管理に続くhttps://sasaiwaishuzo.blogspot.com/2020/01/blog-post_18.html




〇◇〇試飲営業〇◇〇

1月12日(日)13時~17時
1月13日(月)13時~17時
1月14日(火)10時~17時
1月15日(水)10時~17時
1月16日(木)10時~17時
1月17日(金)10時~17時
1月18日(土)13時~17時
1月19日(日)13時~17時